全ての人が輝く職場に!イーリスのニュースレター

ハラスメントの背景①

年末年始には「毎年恒例」「年末スペシャル」「お正月番組」といった、この時期にだけ放送される番組を見る機会が多くあります。筆者も駅伝やお笑い番組を家族で楽しむのですが、学生スポーツやお笑い番組のなかには違和感を感じるものもありました。学生スポーツの実況では「男を見せろ!」と絶叫したり、監督の厳しい檄(げき)が飛ぶ場面を見ることもありますし、お笑い番組ではイケメン俳優のバッグハグが女性アスリートへの「ご褒美」として扱われたり、職場だったらどうかな、と感じる場面が多くあったのです。スポーツでは勝つことを至上の目的と据えて、常勝軍団を良しとする向きもあります。しかし、最近では児童・生徒の成長や人格形成を無視した指導方法を変えた指導者の手記なども多く出ています。在学中頑張ったスポーツを卒業後辞める子供が多い、ということもあるようです。必ずしも勝つことだけを求めているわけではない父兄も増えたようです。

ハラスメントの背景はいくつかありますが、その一つが「多様な価値観・多様性の理解の変化」です。記憶に新しいところでは、ワールドカップのカタール大会で同性愛者の権利を認めないカタール政府に対する抗議や、

イランの女性の権利に対する意思表明でイランのチームが話題になりました。職場に目を向ければ、日本では前例のない速度で高齢化・人口減少が進んで、働く人の確保が難しくなる中、今まで出産・育児で離職していた女性が職場に復帰しやすくなったり、男性が育児休業を取りやすい制度が創設されたり、定年が延長されたり、短時間正社員、地域限定正社員、テレワーク、バーチャルオフィスなどなど、雇用形態や働き方は十年前と比べても驚くほど多様になっています。職場のハラスメントは、これらの変化に働く人の意識が追い付いていないことが一因とされています。以前の働き方、考え方はその時代のベストな方法ではありましたが、時間を経て、人々の価値観や必要が変わっているのだ、ということに意識を向けなければハラスメント防止を本当に理解することにはなりません。そのためにも定期的にセミナーや研修などで意識を呼び起こすことが必要になるのだと思います。

ハラスメントとアサーション

前号でアサーションの手法の一つ、DESC法をご紹介しました。何かを依頼する際は、まず客観的事実を描写して共有し、自身の感情を伝え、そのうえで、依頼し、もしくはこうして欲しい、という代替案を付け加える、というものでした。例えば、遅刻を改めて欲しい時、「①Aさんの遅刻は今朝で今月4回目です。②チームで行う業務に支障が出ています。③時間通りに出勤してほしいのです。④難しい原因があるのであれが、力になりたいので相談してください」というような依頼をすることになります。①は描写(Description)です。事実を伝えることが大切です。②は説明(Express・Explain)です(共感する(Empathize)とも)。ここでは自分の感情を素直に表現します。③は提案(Suggest)するです。こうしてもらいないか?とここで依頼をします。そして④は選択(Choose)です。代替案を出す、というイメージです。もしくは、結果を伝える(Consequences)です。「そうして頂けたら嬉しいです」などと感想を伝えるイメージです。

アサーションの根底には、相手を受容すると共に、自分を受容すること、つまり「人間尊重」があります。自分は自分の考えを持っていいし、相手も相手の考えがあっていい、という考え方です。自分を通すことばかりでは、相手の人間性に配慮が欠ける状況ですし、相手に合わせるばかりでも、自分が自身の人間性を無視している状況、と言えます。自分も相手もOK,という考え方があって初めて対等に意見が言えたり、相手の考えに耳を傾けることができるのです。その上で、共通の目標や着地点、価値観を見つけて最良の方法を導き出すわけです。正解のない場面では、より意見の交換が必要になり、アサーティブであることが求められます。そこにはハラスメントの余地がありません。