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アウティングと事業者の責務

今年7月、保険会社の元社員が職場で受けたアウティングのために精神疾患を発症したことについて、労災認定をされていた、と報道がありました。アウティングによる発症について労災認定を受けたのは初めて、ということです。

アウティングは、本人にことわりなく、性的指向や性自認を第三者が他に明かすことで、「SOGI(「ソジ」や「ソギ」等と読む)ハラスメント」の一種です。よくLGBTと同義のように言われますがSOGIが意味するのは、自分の恋愛対象とする性(Sexual Orientation)、自分が認識している性(Gender Identity)、の意味ですから、LGBTに限らず、心身の性が同一で、恋愛対象が異性である人も含む、すべての人が含まれます。

本件は、入社にあたって緊急連絡先を会社に伝える際、情報の共有範囲を制限することを条件に同性の同居人がいることを上司に伝えたところ、上司が本人に同意なく職場のパート従業員に伝えた、つまりアウティングを行っていたことから、この元社員

が職場でのコミュニケーションを取り難くなり職場の人間関係が悪化、精神疾患を発症して退社しました。アウティングが発覚した際、この上司は「自分で言うのは恥ずかしいと思ったから言っておいた。1人ぐらいいいでしょ」と説明したということで、精神疾患はアウティングに起因し、パワーハラスメントと認められる、として令和4年度、労災に認定されました。

LGBTの人たちは社会的マイノリティとして、生きづらさを感じていたり、偏見、差別を受けている場合があります。自身がLGBTであることをカミングアウトするのは相当の覚悟ややむを得ない理由があるためです。我が国では、6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT法)」が公布、施行されました。基本理念は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであると謳っています。事業主は、その雇用する労働者の理解の増進に関し、普及啓発、就業環境の整備、相談の機会の確保等を行うことにより性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する当該労働者の理解の増進に自ら努めるとされました。

ハラスメント歳時記 9月

今年度の就職内定の解禁は10月1日、ということもあり、採用活動は今頃が最も熱を帯びているころかもしれません。しかし、忘れてはいけないのが就職活動におけるハラスメントです。「就活ハラスメント」とは、「就職活動中やインターンシップの学生等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント」のことをいい、立場の弱い学生等の尊厳や人格を不当に傷つける等の人権に関わる許されない行為です(厚生労働省「就活ハラスメント防止対策 企業事例集」より)。転職を除く就職活動、またはインターンシップを経験した男女1,000人を対象に行った令和2年度の厚生労働省の調査では、就活等セクハラを経験したと回答した者の割合は約4人に1人(25.5%)と看過できない状況です。中でもインターンシップに参加したとき、企業説明会やセミナーに参加したときにセクハラを受けたとする回答が多数に上っており、他に差をつけています。セクハラの内容は、「性的な冗談やからかい」(40.4%)の割合が最も高く、「食事やデートへの執拗な誘い」(27.5%)、「性的な事実関係に関する質問」(26.3%)が多くなっています。

企業は、就活ハラスメントも職場のハラスメントの一つとして、ハラスメント防止の方針を明確化をすることが望ましい、とされています。しかし就活ハラスメントに対して、何もしていない、という企業は全体の70%を超えており、特に100人未満の企業では約80%に上っています。被害学生の中には「入院した」という者もあり、リクルーターに向けた研修や行動指針の策定が急がれます。企業の未来をともに築いていく人材を選抜する重要な場面、就活ハラスメント防止の取組を進めていきましょう。